ここからは、多くの受講者が最も頭を悩ませる「自施設実習計画書」および「実践報告書」の核心部分について、そのまま構造を応用できる合格例文を展開します。BPSDの背景にある本人の心理的ニーズに着目した事例です。
1. 課題設定 理由の記入例文
「課題設定 理由」は、実習全体の背骨となる最重要項目です。「職員が困っているから」という管理視点を排除し、本人の生活上の困りごとや尊厳の回復に焦点を当てます。
【合格記述例】
「対象者A氏(80代・女性・要介護3・アルツハイマー型認知症)。入居から3か月が経過したが、夕刻16時を回ると『子どもたちのご飯を作らなければならない』と荷物をまとめ、施錠された玄関のドアを叩く行動が連日見られている。従来は職員が居室へ誘導し、茶菓を提供して気を逸らす対応を行っていたが、A氏の焦燥感は増すばかりであった。アセスメントシート評価およびご家族からの聴取により、A氏は長年、専業主婦として家族の食事管理を一手に担ってきた高い誇りをお持ちであることが判明した。本人の『夕暮れ時の焦燥』は単なる見当識障害による混乱ではなく、『家族に対する母としての役割を果たせない無力感と不安』が根源にあると推察された。これまでの職員都合の抑制的対応から脱却し、A氏の役割意識と自己効力感を再獲得していただくケアプラン見直しの経緯が必要であると痛感し、本課題を設定した」
2. 目標設定と具体策の記入例文
目標は「達成可能かつ測定可能な言葉」で設定し、具体策にはチーム全体で実行可能なステップを明記します。
【合格記述例】
実習目標:「夕刻時の不安が軽減し、馴染みの役割(夕食の準備作業等)を通じて、自らの意思でリビングにて穏やかに過ごすことができる(4週間の実習期間中、夕刻の焦燥による玄関叩きの頻度を週5回から週1回以下へ低減させる)」
具体策:
1. 15時30分頃、職員から「夕食の準備を手伝っていただけませんか」と自然に依頼し、厨房スタッフの協力を得て、野菜の皮むきや食器の準備など安全に配慮した工程を共同で行う。
2. 作業中は職員が教える立場をとるのではなく、「長年の知恵を教えていただく」という傾聴と敬意の姿勢を貫く。
3. 作業終了時には、他利用者やスタッフの前で「Aさんのおかげで皆の夕食が間に合いました」と感謝を言葉で伝え、役割の達成感を共有する。
4. 実施状況およびA氏の心理的変化を日々の実習記録へ定量・定性の両面から記録し、毎週のショートカンファレンスでフロア全体へケアの手法を共有・標準化する。
3. 実践報告書 考察 記入例
考察は、単なる結果の報告ではなく「何が成功の要因であり、何が反省点として残ったのか」を客観的に自己批評する場です。
【合格記述例】
「4週間の実践を通じて、夕刻の荷物まとめや玄関ドアの叩き行動は劇的に減少し、実習最終週には自ら進んでリビングのテーブル拭きを行われる姿が定着した。BPSD改善事例として表面的な行動変容に目が行きがちだが、本質的な成果は『職員側の認知症観の転換』にあったと考察する。アセスメントシートによる過去の生活史の再評価を行う前は、職員間で『夕暮れ時の不穏』という画一的なラベルを貼り、気を逸らすことばかりに終始していた。しかし、本人の内奥にある『母としての自負』を理解し、生活に意味のある役割を再構築したことで、A氏の情緒的安定がもたらされた。一方で、担当以外の職員が対応した際に、声かけのタイミングが遅れて焦燥感を強めてしまう場面も一部観察された。ケアプラン見直しの経緯をケアマネジャーと共有し、マニュアル化を進めたものの、全職員への理念の浸透にはなお課題が残る。今後は個人の実習で終わらせず、フロア全体のチームケアとして均一なアプローチを継続できるよう、リーダーシップを発揮していく所存である」