パーキンソン病の初期症状を見落とさないためには、「手足が震える前から始まる非運動症状」に意識を向ける必要があります。発症に至るプロセスは、運動障害が現れる何年も前から静かに体を蝕んでおり、これらはプロドローマル(前駆期)症状と呼ばれます。
典型的な前兆の代表格が頑固な便秘です。週に2〜3回しか排便がない状態が何年も続き、市販の下剤が手放せないような状態は、腸管の自律神経が冒され始めている兆候である可能性があります。単なる体質と思い込みがちですが、運動症状の5〜15年も前から便秘に悩まされていた患者は全体の半数以上にのぼります。
次に注目すべきは嗅覚障害の早期発見です。「焦げた匂いが分からない」「香水やコーヒーの香りが以前より薄く感じる」といった症状は、風邪の後遺症や加齢現象として片付けられがちです。しかし、αシヌクレインが脳へと侵入するルートの一つが嗅球(鼻の奥にある匂いの神経)であるため、運動症状が出る数年前から鋭敏さを失うケースが極めて多く見られます。
さらに深刻なサインが、レム睡眠行動障害(RBD)です。通常、夢を見ているレム睡眠中は筋肉の緊張が解け、体は動きません。ところが、脳幹の抑制機能が障害されると、夢の内容に合わせて大声で叫んだり、壁を殴る、隣で寝ている人を蹴るといった激しい異常行動を起こすようになります。国際的な追跡調査では、突発性のレム睡眠行動障害と診断された患者の約70〜80%が、10〜12年以内にパーキンソン病や関連する神経変性疾患を発症するという衝撃的なデータが示されています。