インターネット上の掲示板や野球ファンの間では、「スプリットやフォークは肘の靭帯を断裂させる悪魔の球種だ」という言説がまことしやかに語られます。しかし、整形外科医やスポーツ科学の研究機関による最新の生体力学的調査によれば、挟む球種そのものが直接的に内側側副靭帯(UCL)を破壊するわけではありません。
最大の問題は、肘への負担と怪我予防の注意点を無視した「投球フォームの乱れ」にあります。ボールを指で強く挟み込むと、前腕の屈筋群(特に尺側手根屈筋や浅指屈筋)が過剰に緊張します。筋肉がガチガチに力んだ状態で腕を振ると、肘の関節がスムーズにしならず、前腕を無理やり内旋・外旋させてボールを落とそうとする代償動作が生じます。この「手首を固めて肘を内側にねじり込むリリース」こそが、肘の内側に強烈な外反ストレスを与え、靭帯損傷やトミー・ジョン手術に至る真の原因です。
故障を防ぐためには、ボールを挟んだ状態で前腕を脱力できる柔軟性を養うこと、そして1試合あたりのスプリット投球割合を全体の20〜25%程度に抑える管理が鉄則です。特に投球後のアイシングだけでなく、前腕屈筋群から肘周囲の筋膜リリースを怠らないことが、選手生命を守る防波堤となります。