自宅で柿の葉茶を仕込む際、最も多くの人が陥る失敗が「洗った葉をそのまま天日干しにしてしまう」ことです。生の柿の葉の中には、ビタミンCを自ら酸化・分解してしまう酵素(アスコルビン酸オキシダーゼ)が活発に活動しています。葉を摘み取った後に加熱処理を行わず放置すると、乾燥が進む過程で酵素がビタミンCを次々と分解し、茶葉はどす黒く変色して栄養価値が激減してしまいます。
この分解の連鎖を断ち切る唯一の手段が「蒸し(ブランチング)」の工程です。蒸気による高熱を一気に加えることで、ビタミンCを破壊する酵素タンパク質を変性させ、完全に対流を停止させます。ここで極めて繊細な判断が求められるのが蒸し時間の精密なコントロールです。
検証の結果、湯気が立ち上る蒸し器に葉を重なりすぎないよう投入し、蓋をして強火で維持すべき黄金時間は「1分30秒から2分ジャスト」であることが判明しています。1分未満の短時間加熱では葉の中心部まで熱が通らず酵素が生き残ってしまい、逆に2分30秒を超えて過剰に蒸すと、水溶性の有用成分が細胞壁の外へ漏れ出し、特有の爽やかな風味も著しく損なわれます。タイマーを厳密にセットし、蒸し上がった直後にうちわや扇風機で一気に粗熱を取る急冷作業こそが、鮮やかな色合いと高い栄養価を封じ込める決定打となります。