「布団に黒いダニがいる」という相談の9割以上において、生物学的な意味での屋内ダニ(チリダニ)は該当しません。アレルギーの原因となるチリダニの体長は約0.2〜0.4ミリで半透明の乳白色をしており、特殊な拡大鏡や顕微鏡を使わなければ肉眼で捉えることは不可能です。つまり、部屋の壁やシーツの上で「黒い粒」として目視できている時点で、別の昆虫や屋外性ダニであると断定できます。
室内で見かける「黒いダニのような虫」の正体は、主に以下の6種類に絞り込まれます。
まず疑うべきは、体長約2〜3ミリの丸っこい甲虫であるシバンムシ(タバコシバンムシ・ジンサンシバンムシ)です。赤褐色から黒褐色をしており、乾麺、米、小麦粉、ペットフード、さらには畳の内部から大発生します。シバンムシ自体は人を刺しませんが、最大の問題は放置するとこれを宿主とする「シバンムシアリガタバチ」が大量発生し、就寝中の人間を刺して激しい痛みと痒みを引き起こす点にあります。
次に警戒が必要なのが、国内外で社会問題化しているトコジラミ(南京虫)です。成虫は5〜8ミリですが、孵化直後の幼虫や若虫は1〜3ミリ程度で、吸血前は淡黄色、吸血後は濃い赤黒色へ膨張します。布団の縫い目やマットレスの裏に潜み、夜間に這い出して皮膚を刺入・吸血します。激しい痒みによる不眠症を引き起こし、一度定着すると自力駆除が極めて困難な最凶害虫です。
また、衣類やクローゼット周辺で見かける場合はヒメマルカツオブシムシの成虫が考えられます。体長約2.5〜3ミリで、黒・白・黄褐色の斑紋を持つ丸い甲虫です。成虫は花の蜜を好むため無害ですが、幼虫期にウールやシルク、羽毛布団などの動物性繊維を食い荒らします。春先から初夏にかけて明るい白い壁や窓際へ向かって歩く習性があります。
このほか、カビを餌にする体長1ミリ前後の淡褐色・黒褐色の微小昆虫であるチャタテムシ、丸みを帯びてクモのように見えるヒョウホンムシ、草むらからペットや衣服に付着して室内に持ち込まれるマダニなどが挙げられます。刺す虫なのか、建材や衣類を蝕む虫なのかによって、打つべき手立ては根底から異なります。