エンペラーの長い歴史の中で、世間に最も広く認知されているのが宇梶剛士 ブラックエンペラーという強烈な組み合わせです。ブラックエンペラー 7代目総長に就任した当時の宇梶氏は、身長189cm・体重90kgを超える並外れた体躯を誇り、腕っぷしの強さは他チームの不良たちからも畏怖されていました。
自著『不良品』やテレビの特番インタビューで本人が赤裸々に語っている通り、当時の生活は壮絶を極めました。高校野球の名門校で理不尽な上級生からの暴力に抗議した結果、夢を断たれてドロップアウト。行き場のない怒りとエネルギーをぶつけるように夜の街へと身を投じ、瞬く間にブラックエンペラーの頂点へと駆け上がりました。
当時の関係者や同時代を生きた不良たちの証言によれば、宇梶氏の統率スタイルは単なる暴力による支配ではありませんでした。理不尽なカツアゲや無関係な一般人への危害を厳しく戒め、「筋の通らない喧嘩はしない」という硬派な美学を徹底。他チームとの大規模な抗争では自ら先頭に立って身体を張る一方、警察に追われて少年鑑別所に収容された際には、獄中で読書に没頭し自らの生き方を深く内省したといいます。
出所後、母親の手引きもあって劇団に入団し、名優・菅原文太氏の付き人となった宇梶氏。かつて「数百人の暴走族を従えた男」が、雑用と演技修行に泥臭く汗を流した経験が、現在の国民的バイプレイヤーとしての揺るぎない厚みを生み出していることは論を俟ちません。