葬儀の現場で実際に受付を担当した経験者や、喪主を務めた遺族の手記・生の声を取材すると、形式的なマナー本には書かれていない「夫婦連名のリアルな摩擦」が浮かび上がってきます。
首都圏の葬儀場で長年現場進行を担う1級葬祭ディレクターは、次のように現場の実情を明かします。
「受付で最も確認作業に時間を取られるのが、芳名板の記帳と香典袋の表記の不一致です。芳名録には夫のお名前しか書かれていないのに、香典袋は夫婦連名になっている、あるいはその逆という事態が頻発します。受付係は『返礼品引換券を1枚渡すべきか、2枚渡すべきか』の判断に迷い、結果として行列を滞らせてしまうのです」
SNSや大手Q&Aサイトでも、「夫婦連名で香典をいただいた際、満中陰志(香典返し)を1世帯宛てに1個送ればよいのか、個別に2個用意すべきか迷った」という喪主側の困惑が数多く投稿されています。
夫婦連名における香典返しのマナーとしては、「1つの香典袋に対して返礼品は1つ(世帯単位)」が原則です。ただし、故人と妻との結びつきが強く、相場を大きく上回る金額が包まれていた場合、遺族側は「妻の側にも個別に御礼をすべきではないか」と過剰な心理的負担を抱えることになります。
良かれと思って選んだ夫婦連名が、受贈と返礼の力学の中で遺族に余計な気遣いを強いる結果になっては本末転倒です。連名にする際は、「夫婦2人で参列し、会食をいただくことに対する正当な実費負担」という実質的な整合性が取れているかを意識する必要があります。