法的な観点において、火事場泥棒という単一の独立した罪名は日本の法律上存在しません。しかし、問われる火事場泥棒の罪と罰則は極めて重く、行為態様に応じて刑法の複数の条文が厳格に適用されます。
基本となるのは刑法第235条の窃盗罪であり、他人の財物を窃取した者は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処されます。さらに、避難中の住宅に無断で立ち入った場合は刑法第130条の「住居侵入罪(3年以下の懲役または10万円以下の罰金)」が成立し、鍵や窓ガラスを破壊して侵入した場合は建造物損壊罪や器物損壊罪との牽連犯(けんれんはん)として、より重い量刑が科されます。
他方で、法曹界や国会では刑法における窃盗罪の重罰化に関する議論が定期的に巻き起こっています。被災者の生命の危機や避難生活の苦境に乗じた犯行は、平時の窃盗に比べて著しく悪質であり情状酌量の余地が皆無であるため、「災害時加重処罰規定」を刑法や特別法に盛り込むべきだという意見が根強く主張されています。実際の刑事裁判でも、災害に便乗した犯罪行為に対しては、初犯であっても執行猶予がつかず実刑判決が下されるなど、司法判断の場でも極めて厳しい量刑が適用される傾向にあります。