この人気店を率いるオーナーシェフの岸本薫氏は、パン職人の間でも妥協のない仕事ぶりで知られる人物だ。彼の掲げる信念はシンプルだが、愚直なまでに貫かれている。「パンが最も美味しい最高の瞬間を客に届ける」——ただそれだけだ。しかし、この当たり前を実行し続けることがどれほど過酷か、同業のプロほどよく知っている。
厨房では複数のオーブンが分単位でフル稼働し、スタッフたちが無駄のない動きで次々と焼き上がりのパンを売り場へ運ぶ。岸本氏は素材の選定にも一切の隙を見せない。厳選した小麦のブレンド、発酵温度のミリ単位の調整、その日の気温や湿度にあわせた生地の管理。長年の経験に裏打ちされた職人技と計算されたオペレーションの融合が、いつ訪れても期待を裏切らないクオリティを支えている。