物語の中核をなす「ラブマシン」。それは強力な知識欲を持ち、あらゆるアカウントを侵食していく人工知能アバターだ。米軍国防総省(ペンタゴン)からの依頼を受けた陣内侘助が、自ら組み上げたこのプログラムこそが世界規模のインフラ崩壊を招くことになる。
彼がラブマシンを開発した動機は、国家権力への協力や個人的な悪意などではない。根底にあったのは、「一族を見返したい」「自分を育ててくれた栄に認めてもらいたい」というあまりにも愚直で不器用な自己証明の欲求だった。10年前に陣内家の財産の一部を持ち出し、単身渡米した侘助。莫大な開発費を手に入れ、自営型AIという最先端のイノベーションを完成させた背景には、誰よりも一族を愛しながらも外様として扱われてきた孤立感が影を落としていたのである。