ヤモリとトカゲの識別において、最も確実かつ即座に判断できるポイントは「足の裏の構造」と「目(まぶたの有無)」、そして「活動する時間帯」の3点に集約されます。外見のシルエットこそ似ていますが、進化の過程で獲得した身体機能は対照的です。
まず注目すべきは足の指先です。日本家屋の周辺で目にするニホンヤモリの足先には、微細な毛が密集した「趾下薄板(しかはくばん)」と呼ばれる吸盤状の器官が発達しています。ファンデルワールス力(分子間力)を利用してツルツルとした垂直のガラス面や天井に難なく張り付き、高速で移動できるのがヤモリ最大の特徴です。対照的に、日当たりの良い庭石や草むらに生息するニホントカゲの足には吸盤がなく、鋭い爪が生えているのみです。そのため、トカゲは土や岩の隙間を素早く走ることは得意ですが、平滑な壁や窓ガラスを垂直に登ることは物理的に不可能です。
次に顔立ちを観察すると、決定的な差が「まぶた」に現れます。トカゲには人間と同様に上下に動くまぶたが存在し、眠る際や瞬きの瞬間に目を閉じます。一方のヤモリには可動式のまぶたがなく、常に目が開いた状態のままです。角膜の表面は透明なウロコで保護されており、目にゴミがついた際は自らの長い舌で器用に舐めて掃除を行います。「瞬きをするかどうか」は、至近距離で観察した際の極めて明快な識別基準となります。
さらに生態面では、ニホンヤモリが「完全な夜行性」であるのに対し、ニホントカゲは「昼行性」という明確な住み分けがなされています。トカゲは日光浴によって体温を上げなければ活動できない変温動物の典型であり、日中の日向ぼっこ姿が頻繁に目撃されます。対照的にヤモリは日没後に活動を開始し、街灯や部屋の明かりに引き寄せられて集まる昆虫を狙って出没します。