ネット上の掲示板やSNSでは、毎年の甲子園シーズンになるとネットの反応と評判がタイムラインを埋め尽くします。しかし、画面越しに聴く印象と、アルプススタンド現地で体感する空気の間には決定的な差があります。
実際に甲子園球場の一塁側・三塁側内野席で取材を続けると、相手校のファンや中立の高校野球ファンからも「あのリズムが鳴り出すと、思わずメガホンを叩く手が止まらなくなる」「相手チームの攻撃なのに、楽しそうすぎて引き込まれそうになる」といった証言が相次ぎます。敵味方の垣根を越えて球場全体をテーマパークのような祝祭空間に変えてしまう包容力こそが、このコールの本質です。
一方で、グラウンドの当事者である球児たち、とりわけ相手校のバッテリーにとっては別のリアルが存在します。過去の大会で対戦した元高校球児へのヒアリングでは、次のような生々しい証言が得られました。
「マウンドに立っていると、スタンド全体が上下に揺れているのが視界の端に入ります。自分たちのキャッチャーのサインを見る視界の中でメガホンが一斉に上下するので、遠近感が狂いそうになる感覚がありました。アウトを一つ取ってもコールの音が止まないため、想像以上のスタミナを削られます」(元甲子園出場投手)
応援する側にとっては最高の高揚感である一方、対戦相手にとっては目と耳の両方から精神を削られる強力な戦術的武器として機能していたことが窺えます。