「べらぼう」を語る上で外せないのが、接尾辞の「め」を伴った「べらぼうめ」という言い回しだ。落語の落とし噺や時代劇でおなじみのこのフレーズは、江戸っ子の喧嘩口調の代名詞でもある。しかし、その根底に流れるのは陰湿な悪意ではなく、カラッとした江戸っ子の粋(いき)と感情の発散だ。
言いたいことを溜め込まず、その場で吐き捨てて尾を引かない。巻き舌混じりの「べらんめえ調」へと発展した言葉の音律は、狭い長屋で隣り合って暮らす庶民たちが、ストレスを溜め込まずに潤滑な人間関係を保つための知恵でもあった。口は悪いが腹は立たない、そんな絶妙な対人距離感がそこには表現されている。