ダニ集合体の中でも、人命に直結する最大の脅威がマダニ感染症SFTS(重症熱性血小板減少症候群)です。国立感染症研究所(NIID)および厚生労働省の公表データによると、SFTSはウイルスを保有するマダニに刺咬されることで感染し、致死率は約10〜30%に達します。かつては西日本中心の感染症とされていましたが、近年では東日本や北日本へも確認地域が拡大しており、全国的な警戒が必要とされています。
成虫だけでなく、肉眼で見落としやすい幼虫や若虫であってもウイルスを保有していれば感染源となります。草むらでマダニ幼虫の塊に気づかず足を突っ込んでしまった場合、数分から数十分の間に数百〜数千匹の幼虫が一気にズボンや靴下を這い上がり、皮膚の柔らかい部位(鼠径部、脇の下、膝裏、下腹部など)に到達して一斉に咬着します。
マダニに刺された場合の典型的な症状は以下の経過を辿ります。
- 刺咬直後〜数日:痛みや痒みを感じにくく、吸血されていることに気づかないケースが多い。マダニの唾液には局所麻酔様物質や抗凝固物質が含まれているためです。
- 潜伏期間(6日〜2週間):38度以上の発熱、全身倦怠感、食欲不振、吐き気・嘔吐、下痢などの消化器症状が突如出現。
- 重症化時:血液中の血小板や白血球が急激に減少し、皮下出血、下血、意識障害、多臓器不全を引き起こします。
現場取材や登山者の生々しい体験談でも、「ヤブ漕ぎをした数時間後、足首を見たら黒い砂利が付いていると思ったら全てマダニの幼虫だった」「1箇所ではなく数十箇所同時に噛まれ、皮膚科で切除処置を受けた」といった被害報告が散見されます。草むらでの集合体接触は、単なる虫刺されの範疇を完全に超えた医療リスクです。