川栄李奈という表現者を語る上で避けて通れないのが、AKB48時代の激動の日々と、そこからの自立を決意した卒業の経緯です。
2010年にAKB48の11期生として加入した彼女は、持ち前の明るさと愛嬌、バラエティ番組『めちゃ×2イケてるッ!』のテスト企画で見せた天真爛漫なキャラクターで一躍お茶の間の人気者となりました。選抜総選挙でも上位に食い込むなど、グループの次世代を担う中心人物として期待を集めていました。
しかし2014年5月25日、岩手産業文化センターで行われた握手会において、刃物を持った暴漢に襲撃されるという衝撃的な事件が発生します。右手親指の骨折や裂傷などの重傷を負い、心身ともに深い傷を負うこととなりました。
療養期間を経て劇場公演には復帰したものの、ファンと直接触れ合う握手会への参加は心理的・安全面から困難な状況が続きました。当時のインタビューや手記において、彼女は「握手会に出られない自分は、AKB48のメンバーとしての役割を十分に果たせていないのではないか」という申し訳なさと強い葛藤を抱えていたことを明かしています。
そして2015年3月のさいたまスーパーアリーナ公演で電撃卒業を発表し、同年8月にグループを巣立ちました。この決断は単なる事件からの逃避ではなく、かねてより胸に秘めていた「お芝居を本格的に学び、女優として生きていく」という覚悟を固めた瞬間でもありました。悲劇的な出来事に対して被害者の立場に甘んじることなく、自らの意志で人生の舵を大きく切った強靭なメンタリティこそが、その後の大躍進の原動力となっています。