病名が付く疾患に至らずとも、神経伝達物質や内分泌系の乱れが耐え難い眠気の引き金となる事例が急増しています。特に見逃せないのが自律神経の乱れによる眠気と、女性特有のホルモンバランスの周期変動です。
体内時計の狂いとデジタル疲労による自律神経の混乱
日中に交感神経が優位になり、夜間に副交感神経へスムーズにバトンタッチされるのが健康な生体リズムです。しかし、就寝直前までのスマートフォンの凝視や夜遅い食事、慢性的な心理的ストレスに晒されると、就寝中も交感神経が高ぶったままになります。深部体温が十分に下がりきらず、内臓も休止できないため、心拍数が高止まりした浅い眠りが延々と続きます。朝起きても交感神経が正常に立ち上がらず、全身のだるさと眠気が終日付きまとうことになります。
女性ホルモン「プロゲステロン」の影響とライフステージ
「8時間寝ても眠い女性」の場合、月経周期に伴うホルモンバランスの変動を考慮しなければなりません。排卵後から月経直前の「黄体期」には、女性ホルモンの一種であるプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が急増します。このプロゲステロンには強い催眠作用があるだけでなく、基礎体温を高温期に維持する働きを持っています。
本来、良質な睡眠に入るためには「皮膚温度が上がり、深部体温(身体の中心部の温度)が急激に下がる」という熱放散のプロセスが欠かせません。ところが黄体期は夜間も深部体温が下がりにくいため、眠りが浅く分断されやすくなります。月経前症候群(PMS)や月経前不快気分障害(PMDD)、さらにはエストロゲンが激減する更年期においても、同様の睡眠構造の変化が生じます。「しっかり寝ているのに日中つらい」と感じる女性の多くは、意思の弱さではなく、女性ホルモンが睡眠中枢と体温調節機能に直接及ぼす生理的影響を受けているのです。