『銀河伝説ノア』のクライマックスは、シリーズ屈指の残虐さを誇った侵略者・赤蟻兄弟(長男・赤蟻、次男・白蟻、三男・黒蟻をはじめとする四国からの刺客軍団)との全面対決でした。かつてのモンスーン戦のような怪獣バトルから一転、犬同士の組織力、謀略、そして縄張り争いが泥臭く描かれた点こそが本作の大きな特徴です。
最終盤における激戦地は、赤蟻軍団の拠点となっていた関西・四国方面の山野。圧倒的な体躯と凶暴性を誇る赤蟻に対し、総大将ウィードや銀の教えを受け継ぐ奥羽軍、そして精神的成長を遂げたオリオンが立ち向かいます。激情に駆られ「敵は皆殺しにする」と息巻いていた若きオリオンに対し、終始「無駄な殺生を避け、赦すことの強さ」を説き続けたのが老犬ノアでした。
決戦の最終局面、首領格である赤蟻は奥羽軍の連携とオリオンの渾身の一撃の前に敗れ去ります。命乞いをする敵幹部に対し、かつてのオリオンであれば躊躇なく牙を突き立てていたところを、ノアの存在が押し留めます。「憎しみの連鎖をここで断ち切る」という決断を下したオリオンは、敵勢力の残党を粛清するのではなく、奥羽の誇りを示した上で放免・和解への道を選択しました。
最終話(第17巻収録)では、平和を取り戻した奥羽・二子峠の穏やかな光景が描かれます。役目を終えたかのように静かに去りゆくノアの背中と、それを見送るオリオンたちの眼差し。単なる武力による制圧ではなく、「真の強さとは何か」を次世代へ継承した静謐かつ胸を打つエピローグとなりました。