「手術によって声帯そのものが変化し、声質が別人レベルに変貌することは構造上あり得ません」――日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会に所属する複数の耳鼻咽喉科専門医は口を揃える。臨床の場で行われる標準的な治療法、すなわち鼻中隔矯正術(内視鏡下鼻腔手術)は、曲がった鼻中隔の軟骨や骨の一部を切除・整復し、狭まった気道を広げるアプローチだ。
声帯に直接アプローチするわけではないため、声帯の振動によって生じる「原声」そのものが変化するわけではない。それにもかかわらず「声が変わった」と感じる人が存在する理由は、音の響きを左右する「鼻腔共鳴」にある。鼻づまりが解消され、呼気が鼻腔をスムーズに通り抜けるようになることで、くぐもっていた鼻声が抜けの良いクリアな音へと変化するのだ。本人は耳慣れない響きに一瞬戸惑うかもしれないが、第三者からは「本来のクリアな通る声になった」と肯定的に捉えられるケースが大半を占める。