画面から匂い立つような熱量の源泉は、主演を務めた明石家さんまと大竹しのぶの希代の化学反応にある。『夏物語』から続くふたりの丁々発止のテンポは、台本とアドリブの境界線を完全に消し去っていた。関西弁のテンポ良いツッコミの裏に潜む良介の照れと切なさ。一見サバサバしながらも、奥底に深い情念と孤独を抱える桃子の揺れ。二人の視線が交錯するコンマ数秒の静寂に、視聴者は息をのむ。
二人の関係性は、後に現実の結婚と離婚というドラマをたどることになるが、劇中で描かれたあの空気感には、一切の嘘がない。役者同士がカメラの前で本気で魂を削り合い、互いの存在に揺さぶられていた瞬間が、フィルムの粒子一つひとつに刻み込まれている。計算し尽くされた現代の洗練された演技指導では決して再現できない、野生的な感情のぶつかり合いがそこにはある。