抗生物質を飲ませ始めた直後に愛猫が軟便や下痢を起こしたり、食欲不振や嘔吐を見せたりする場合、いくつかの明確な生物学的理由が存在します。もっとも頻度の高い要因は「腸内細菌叢(マイクロバイオーム)の崩壊」です。
抗生物質は病原菌を攻撃する過程で、猫の腸内に共生している無害な善玉菌まで広範囲に殺菌してしまいます。その結果、腸内バランスが急激に崩れ、水分吸収がうまくいかなくなって下痢便が引き起こされます。また、薬剤そのものが胃粘膜を直接刺激して吐き気や胃部不快感をもたらし、結果として食欲不振に陥るケースも珍しくありません。
臨床現場の獣医師によると、投薬開始から24〜48時間以内に軽度な軟便や一過性の食欲低下が見られるケースは全体の約15〜20%にのぼります。ただし、注意が必要なのは単なる消化器の乱れにとどまらず、稀に生じる「薬物アレルギー」です。
万が一、顔周囲の腫れ(ムーンフェイス)、全身のかゆみ、激しい頻回の嘔吐、呼吸の乱れ、虚脱が見られた場合は、アナフィラキシー様反応の疑いがあるため直ちに投薬を中止し、夜間救急を含む動物病院へ連絡してください。一方で、軟便程度であれば自己判断で薬をストップせず、整腸剤の併用や投薬タイミングの変更(食後への変更など)が可能かを主治医に確認するのが安全な対処法となります。