凪良ゆうの名を全国区へと押し上げた代表作『流浪の月』は、繊細なテーマを扱いながらも読む者の倫理観を激しく揺さぶる傑作です。
物語の主人公・更紗は、ある事情から家に帰りたがらなかった小学4年生の夕方、公園で出会った19歳の大学生・文に連れられて彼の部屋で2ヶ月間を過ごします。そこは彼女にとって唯一の居場所でしたが、文は誘拐犯として逮捕され、更紗は「傷つけられた被害女児」として世間の目に晒されることになります。15年後、過去を隠して生きる更紗の前に、偶然にも文が再び現れたことで運命が大きく動き出します。
2022年には李相日監督の手により広瀬すずと松坂桃李のダブル主演で実写映画化され、興行的・批評的にも大きな反響を呼びました。世間が押し付ける「善意の同情」という名の暴力性に鋭く切り込み、他人に理解されずとも自分たちだけの真実を守り抜こうとする切実な絆は、読後も長く心に残り続けます。