2割特例が切れた後、事業者は「本則課税(一般課税)」か「簡易課税」の二者択一を迫られます。この計算方式の選択を誤ると、納税額に百万円単位の格差が生じるケースも珍しくありません。負担増を避けるためには、それぞれの計算ロジックを正確に把握しておく必要があります。
ここで重要なのが、簡易課税における「みなし仕入率」の事業区分です。
- 第1種(卸売業):90%(納付割合:10%)
- 第2種(小売業):80%(納付割合:20%)
- 第3種(製造業・建設業等):70%(納付割合:30%)
- 第4種(飲食店業等):60%(納付割合:40%)
- 第5種(サービス業・士業等):50%(納付割合:50%)
- 第6種(不動産業):40%(納付割合:60%)
具体的なシミュレーションで比較してみましょう。年間の売上高が800万円(税抜、預かり消費税80万円)、実際の経費が200万円(税抜、支払消費税20万円)のフリーランスエンジニア(サービス業:第5種)の場合:
- 2割特例:80万円 × 20% = 16万円の納税
- 簡易課税(第5種・50%):80万円 × (1 − 0.5) = 40万円の納税
- 本則課税:80万円 − 20万円 = 60万円の納税
2割特例の恩恵が切れた後、何の手続きもせず自動的に本則課税へ移行してしまうと、年間の納税額は16万円から一気に60万円へと約3.7倍に跳ね上がります。一方、事前に簡易課税を選択しておけば40万円に抑えられ、20万円もの資金流出を阻止できます。簡易課税の適用を受けるには、適用を受けようとする課税期間の初日の前日(個人事業主であれば前年の12月31日)までに税務署へ届出書を提出しなければなりません。「知らなかった」の一言で数十万円が失われるため、事業年度ごとの期日管理が生命線となります。