営業当時のホテル町田ヴィラは、利用者からどのような評価を受けていたのでしょうか。当時の宿泊予約サイト(じゃらん、楽天トラベル等)に残された数千件のレビューデータおよびSNS上の投稿を再検証すると、現代の無人化・効率化されたビジネスホテルにはない、温かみのあるサービスが高く支持されていた実態が浮かび上がります。
特に絶賛されていたのが、朝食の質の高さです。1階に位置していたレストラン「ヴィラ」で提供された朝食バイキングは、既製品を並べるだけの低価格ホテルとは一線を画していました。料理人が毎朝手作りする出汁巻き卵や焼き魚、地元野菜をふんだんに取り入れた和総菜は、出張族だけでなく「朝食を目当てに宿泊する」という熱烈なリピーターを生み出していました。
また、別館(アネックス)の存在もユニークな特徴でした。本館から数十メートル離れた静かな一角に佇む別館は、客室数が絞り込まれており、静粛性とプライベート感を求める長期滞在者や受験生に重宝されていました。客室の内装は落ち着いた木目調で整えられ、バスルームの広さや遮音性の高さにおいて、同時期の競合施設をリードしていました。
一方で、閉館直前の数年間には「Wi-Fiの通信速度が不安定」「コンセントの配置が古く、スマートフォンの充電に不便」「ユニットバスの段差や水回りの経年劣化が目立つ」といった、時代遅れとなったハード面への不満の声が目立ち始めていたことも事実です。ソフト面の卓越したホスピタリティと、急速に陳腐化するハード設備との乖離が、末期の同ホテルが抱えていた最大のジレンマでした。