「きゅうりを味噌汁に入れるなんて邪道」と感じるかもしれませんが、食文化の歴史を紐解くと、きゅうりの味噌汁は日本の伝統的な郷土料理として各地に根付いています。
山形県や福島県などの東北地方、長野県などの信州地方では、夏場に大量収穫されるきゅうりを消費するための生活の知恵として、日常的に温かいきゅうりの味噌汁が作られてきました。特に家庭菜園で育ちすぎて種が大きくなった大ぶりなきゅうりは、皮を厚めに剥き、種をスプーンでくり抜いて輪切りにし、油揚げや茗荷(みょうが)とともに煮立てます。冬瓜のような透明感と柔らかな口当たりになり、暑い農作業の合間に塩分と水分を補う最高のごちそうとされてきました。
また、宮崎県を中心とする九州地方では、すり鉢で擦ったゴマと味噌に出汁を合わせ、薄切りのきゅうりや豆腐、大葉を浮かべた「冷や汁」が郷土料理として全国に知られています。温・冷を問わず、きゅうりと味噌の組み合わせは日本人が何百年もかけて培ってきた確かな食の知恵なのです。