帽子やスヌード、セーターの身頃など、鎖編みを「輪」にして編み始めるケースでは、裏山をめぐる別の難題が立ちはだかります。それが「鎖編みのねじれ現象」です。
ネット上の簡易的なチュートリアルでは「最初の鎖編みをまっすぐ整えてから最初の目に引き抜く」とあっさり書かれていることが多いものの、目数が100目を超えるような大作になると、途中で1回転ねじれてメビウスの輪状態になってしまう事故が後を絶ちません。1段目を編み終えてからねじれに気づき、すべてをほどいて編み直す徒労感は、編み物初心者を挫折させる大きな要因です。
この失敗を物理的に根絶するプロの手法が、「作り目の最初のループを針から一度外し、ねじれを完全に封じるロック法」です。
鎖編みを2〜3目編んだ段階で、かぎ針にかかっているループをそっと外します。そして、作り目の「第1目の表側(または裏山)」に針先を前から刺し、その状態のまま外していた元のループを再び針に戻します。あとはそのまま必要な目数まで鎖編みを編み進めるだけです。編み終えた瞬間にはすでに最初の目と最終目が針上で直結しているため、物理的に100%ねじれる余地がない状態で輪が完成します。
また、どうしても長い鎖の裏山を拾うのが苦手な場合は、「鎖編みと細編みを同時に編み進める作り目(ファンデーション・シングルクロッシェ)」という選択肢もあります。これは裏山を探す工程そのものをスキップしながら、伸縮性のある理想的な裾を作り出す高度な基礎テクニックとして近年広く支持されています。