「性行為の相手が限られているのに、なぜ感染したのか」という疑問に対し、感染症専門医の臨床知見や公衆衛生データは明確な回答を示しています。クラミジア(Chlamydia trachomatis)は他の性感染症と比較しても毒性が極めて穏やかで、宿主(人体)を急激に攻撃しない代わりに、免疫の攻撃を逃れて長期生存する性質を持っています。心当たりがないと感じる最大の理由は以下の3点に集約されます。
第一に、「過去の感染が何年も前から続いていた」というタイムラグの問題です。クラミジアの一般的な潜伏期間(感染から初期症状が出るまでの期間)は1〜3週間とされていますが、これはあくまで急性症状が出る場合の目安に過ぎません。女性の場合、感染者の約80%が自覚症状をほぼ持たないため、1年前、あるいは5年以上前の元パートナーから感染した菌が、症状を出さずに子宮頸管内に留まり続けていたケースが珍しくありません。
第二に、「現在のパートナーが無症状の保菌者(キャリア)だった」というパターンです。男性側も約50%が無症状、あるいは「尿道が少しむずがゆい程度」で数日で違和感が薄れるため、感染に気づかないまま長期間放置している例が多発しています。男性側が悪意を持った浮気をしていなくても、過去の交際相手から受け継いだ菌が現在の関係の中で女性に移行することは医学的日常茶飯事です。
第三の見落としが、「咽頭(のど)への感染」です。性器同士の直接的な接触がなくても、オーラルセックス(クンニリングスやフェラチオ)を介して、パートナーののどから自身の性器へ、あるいはパートナーの性器からのどの粘膜へと菌が侵入します。のどのクラミジア感染はほぼ100%が無症状であるため、性器以上に感染源として見逃されやすい盲点となっています。