日本の美術史において、「正月の絵画」は単なる季節の記録を超え、人々の切実な幸福祈願のメディアとして機能してきました。浮世絵における正月の風景を見渡すと、江戸庶民の熱気と美意識が克明に描かれています。
歌川広重の『名所江戸百景』に収められた「霞かせき」では、正月飾りの松が立ち並ぶ通りを凧が悠々と舞う様子が描かれ、平和な新春の情景が見事な構図で切り取られています。葛飾北斎の肉筆画や勝川春章らの役者絵でも、羽子板を手にした美人画や七福神の宝船など、見る者に福をもたらす視覚装置として正月画が重宝されました。
また、近代日本画の巨匠・横山大観が終生描き続けた『霊峰不二(富士山)』や、吉祥画の最高峰とされる『旭日』の連作は、陽光と白雪の鮮明な対比によって国家や個人の新たな門出を祝福する崇高な精神性を宿しています。名画に共通するのは、画面の中に「生命の再生」と「光の到来」を象徴する視覚的秩序が緻密に構築されている点です。