安藤桃子の作家性を語る上で外せないのが、自身の長編小説を自ら映画化した『0.5ミリ』である。3時間を超える上映時間でありながら、観客を一瞬たりとも飽きさせない圧倒的な推進力。それを支えたのは、主演を務めた妹・安藤サクラとの凄まじい魂の交感だった。介護ヘルパーの主人公が、わけあり老人たちと繰り広げる奇妙な同居生活は、ユーモアと痛切な哀歓を織り交ぜながら社会の歪みを浮き彫りにした。
単なる社会派告発にとどまらず、人間の狡さや弱さごと丸ごと抱きしめるようなこの傑作ヒューマンドラマは、国内外の映画賞を総なめにした。生と死、老いと欲望という重層的なテーマを、これほどまでに生々しく、かつポップなエンターテインメントへと昇華させた手腕は、彼女が唯一無二のストーリーテラーであることを証明した瞬間だった。