肉の旨味を決定づけるもう一つの重要な要素が、職人による「手切り」の技術である。スライサーによる機械的なカッティングでは筋繊維が潰れ、大切な肉汁が逃げ出してしまう。
肉塊の繊維の走り方を見極め、包丁の刃を入れる角度をミリ単位で微調整する。適度な厚みを持たせることで、噛み締めた瞬間にジュワッと溢れ出す肉汁の爆発力を担保するのだ。鍋の縁でじっくり火を通したタマネギが羊の脂を吸い込み、甘みを極限まで引き上げる。単なる肉料理ではない。北海道の気候風土と職人技が結晶化した日本郷土料理の到達点が、まさにこの鍋の上にある。