茨木のり子は2006年2月17日、東伏見の自宅寝室にてくも膜下出血(死因)のため急逝しました。享年79。数日間連絡が取れないことを心配した親族によって発見されたため、形式上は「孤独死」と報じられましたが、その実態は自ら選び取った見事な去り際でした。
彼女の死後、親しい知人や編集者たちのもとに、生前に本人が印刷して準備していた「死亡通知の挨拶状(あの世からのお便り)」が届きました。そこには、取り乱すことなく自らの人生の幕引きを周囲に告げる、ユーモアと気品に満ちた文章が綴られていました。
「この世を去りました。行先はどこやらわかりません」「葬儀も香典も辞退いたします」という趣旨の潔い挨拶状は、他者に余計な負担をかけず、自らの死生観を貫き通した姿勢として当時の文壇およびメディアで大きな称賛を浴びました。最後の瞬間まで誰かに寄りかかることなく、自らの生と死を自己決定したその生き様は、現代の終活やシニアライフのあり方にも絶大な影響を与え続けています。