ネット上で流布している情報の中には、科学的根拠を欠いた俗説も少なくありません。その代表的な誤解を是正しておきましょう。
まず最大の誤解は、「集合体恐怖症は治療しなければ悪化する精神疾患である」という言説です。前述の通り、アメリカ精神医学会の診断基準(DSM-5-TR)において、トライポフォビアは独立した疾患としては登録されていません。多くの人にとってこれは「高所から下を覗くと怖い」という感覚と同じく、正常な防衛本能のグラデーションの一種であり、日常生活が破綻していない限り、無理に「病気」としてラベリングする必要はありません。
もう一つの危険な俗説は、「画像を無理やり見続けて目を慣らせば治る」という力任せの根性論です。準備のないままショッキングな刺激を凝視することは、脳内の不快記憶(フラッシュバック)を強化し、かえって症状を悪化させる危険を孕んでいます。