制度や条例が整った一方で、実際の祭りの現場はどのように変化したのでしょうか。現地で長年店舗を営む浅草仲見世の店主や、神輿の担ぎ手、そして一般の見物客の声から現在のリアルな状況が浮かび上がってきます。
「20年ほど前は、宮出しの日になると店のシャッターを完全に下ろし、万が一の乱闘に備えて息を潜めていました。神輿が近づくと怒号が飛び交い、刺青を入れた男たちが威圧的に肩を怒らせて歩いていたものです。しかし現在の三社祭では、朝から家族連れやお年寄りが最前列で拍手を送り、担ぎ手たちも息を揃えて整然と神輿を揺らしています。昔を知る者からすれば、同じ祭りとは思えないほどの治安の良さです」(浅草仲見世商店街の古老店主)
こうした劇的な環境変化の背景には、浅草神社奉賛会が主導した「半纏(はんてん)合わせ」の厳格化があります。かつては誰でも手に入れられた町会半纏ですが、現在は各町会の役員が身元を確認した参加者にのみ直接貸与され、ナンバリングやICタグ等によって部外者や無関係な同好会への流出を徹底的に防止しています。正規の半纏を着用していない人物は神輿に取り付くことすらできません。
また、刺青に関する指導も極めて具体的です。万が一刺青がある担ぎ手であっても、長袖の機能性アンダーシャツやサポーター、テーピングによって肌を完全に露出させないことが絶対条件となっており、肌を晒した時点で即座に渡御列から退去させられます。SNSや動画配信が普及した現在、不適切な露出は瞬時にネット上で拡散されるリスクがあるため、町会責任者側のチェック体制も過去にないほど厳格を極めています。