かつての「ブラック企業」は、過酷な残業や怒号が飛び交う分かりやすいものだった。だが今は違う。残業はなく、定時で帰れる。しかし、成長機会もなければ昇給も見込めない「ゆるブラック」企業が急増している。過度なコンプライアンス意識が裏目に出て、上司は部下に厳しい指導を避けるようになった。
結果として、若者は職場での自己成長を感じられず、「静かな退職(Quiet Quitting)」を選択する。波風を立てずに最低限の仕事だけをこなす。しかし、その胸の内では「このままでいいのだろうか」という焦燥感が渦巻いている。この静かなる危機こそが、現代の労働環境を蝕む病理だ。