麻田奈美の名を不滅のものにしたのは、1973年に創刊された男性誌『GORO』(小学館)の創刊号に掲載されたグラビアでした。希代の写真家・篠山紀信が撮影を担当し、少女と大人の女性の狭間にある瑞々しい肉体を、両手で持った1個のリンゴで胸を隠すという構図で切り取った一枚は、日本中に凄まじい衝撃を与えました。
この「リンゴ写真」は単なるピンナップにとどまらず、雑誌の特別付録として巨大ポスター化されました。当時、街頭の書店や駅頭に掲示されたポスターが次々と盗難被害に遭うという前代未聞の事態が全国で多発し、一般紙の社会面でも報じられるほどのカルチャー現象へと発展したのです。
美術評論家やメディア研究者の分析によると、篠山紀信が演出したこのビジュアルは、従来の露骨なエロティシズムとは一線を画す「無垢な透明感と神秘性」を兼ね備えていました。リンゴという普遍的なモチーフと、彼女のあどけなくもどこか憂いを帯びた表情が完璧な調和を生み出し、日本のグラビア写真を「大衆向け娯楽」から「写真表現の芸術」へと昇華させる決定打となったと評されています。