厚生労働省と中央労働災害防止協会(中災防)が主導する「第83回 全国安全週間2010年」において、公募総数1,348点の中から選ばれた本週間スローガンは、以下の力強い一節でした。
「みんなで進めようリスクアセスメント めざそう職場の安全・安心」(平成22年安全標語)
当時の報道発表資料および選定委員会報告によると、この作品が選ばれた背景には、法改正への対応と現場の疲弊という二重の課題がありました。2006年の労働安全衛生法改正によって危険性・有害性の事前評価(リスクアセスメント)の実施が努力義務化されたものの、2010年時点では中小企業を中心に「専門用語ばかりで現場に定着しない」「書類作成の負担が増えただけ」という形骸化が深刻視されていました。
全国安全週間スローガン選定経緯の記録を追うと、審査委員からは「難解と受け止められがちなリスクアセスメントという制度を、現場作業員一人ひとりが主役となって進める平易な掛け声へと昇華させている点」が高く評価されたことが分かります。「作業員個人に気配りを強いる精神論」から「組織全体で危険の芽を事前に摘む工学的アプローチ」へと、日本の労働安全政策が舵を切った瞬間を象徴する作品です。
同時に設定された年間を通じた安全衛生の呼びかけとして、2010年の中央労働災害防止協会標語や全国労働衛生週間では「適正な作業計画で負担軽減 心とからだの健康づくり」が採択されました。リーマンショック以降の過酷なノルマやリストラ進行に伴い、メンタルヘルス不調や過重労働が社会問題化していた世相を克明に映し出しています。