平幹二朗さんの凄絶さは、亡くなる直前まで表現者として第一線に立ち続けていた点にある。当時、彼はフジテレビ系月9ドラマ『カインとアベル』に主人公の祖父役として出演中であり、訃報のわずか数日前まで撮影現場で威厳ある芝居を披露していた。
体調不良による長期療養や衰弱の末の死ではなく、倒れる直前までセリフを覚え、カメラの前に立っていた。劇団俳優座からキャリアをスタートさせ、蜷川幸雄監督の舞台で『王女メディア』や『ハムレット』を演じ切り、シェイクスピア俳優として世界を唸らせた男の最後は、ある意味で「生涯一役者」を体現する劇的な幕引きでもあった。