ネット上のQ&AサイトやSNSの相談事例を検証すると、「上司や同僚を褒めるつもりで『月とすっぽん』を使ってしまい、場の空気が凍りついた」という失敗談が散見されます。
この慣用句を対人関係で使用する際、最も注意すべきなのは「相手をスッポン側に配置してしまうリスク」です。言葉の成り立ち上、スッポンは泥の中にいて見栄えが劣る側として描かれます。そのため、特定の人物同士を比べて「A部長とBさんでは月とすっぽんですね」などと口にすれば、Bさんに対して極めて悪質な人格否定・侮蔑のメッセージとなってしまいます。
社会心理学における「心理的リアクタンス(他者からの評価に対する反発)」の観点からも、公の場で他者から「すっぽん」と見なされた人間は強い屈辱感と敵意を抱きます。たとえ悪気がなく「差が大きいこと」を表現したかっただけであっても、使われた側にとっては修復不可能な関係の亀裂を招きかねません。
対人マナーとして「失礼」にならないための鉄則は以下の2点に集約されます。
- 第三者同士の人間を比較して使わない:片方を貶める構造になるため、他人の能力や容姿の対比には絶対に使用しない。
- 相手を立てて自分を下げる「自虐(謙遜)」に限定する:「先輩の卓越したプレゼン技術に比べれば、私の発表など月とすっぽんでお恥ずかしい限りです」といった使い方は、日本的な謙譲表現として成立します。