市場では「のどぐろは年中美味しい」と語られることが多いものの、産地や水揚げ海域によって脂の乗り方には明確なサイクルが存在します。日本海沿岸(島根・石川・新潟など)のデータによると、産卵前で最も身が肥える秋から冬(9月〜翌2月頃)が最も脂質含有量が高まり、個体によっては魚体の20%以上が脂質で占められます。
脂乗りが極めて強い旬の大型個体を煮る場合、煮汁にとろみがつくまで煮詰める「強火短時間アプローチ」が真価を発揮します。逆に、初夏などのやや脂が落ち着いた時期の個体は、煮汁の醤油比率をわずかに控えめにし、出汁の割合を増やすことで上品な旨味を引き立たせるのがプロの技術です。
SNSや料理コミュニティでは「のどぐろを煮たらパサパサになった」という声が散見されますが、その9割以上は「弱火でコトコト煮込みすぎたことによる脂の抜け落ち」が原因です。のどぐろの加熱は、沸騰した煮汁の泡で包み込むように短時間(10分以内)で一気に火を通すのが正解です。