当事者の高齢化が進み、事実上の直接対話の時間が限られる中にあっても、なぜこの問題は根本的な解決に至らないのでしょうか。そこには法制度の枠組みだけでは解消できない、日韓両国の社会心理とナショナリズムの構造的なズレがあります。
日本側の社会通念において重視されるのは「条約の遵守(合意の拘束力)」と「法治主義」です。1965年の協定、1995年の基金、2015年の合意と、節目ごとに国家間の取り決めを交わし、巨額の資金拠出と首相の謝罪を重ねてきたにもかかわらず、政権交代や司法判断によって合意が覆されることへの強い不信感と徒労感が蓄積しています。
対する韓国側の社会運動を駆動しているのは「被害者中心主義」と「感情の正義」です。植民地支配という非対称な歴史体験に根差した国民感情があり、被害者本人が心から納得できる形での「法的責任の明確化と真の反省」が示されない限り、いかなる国家間協定も無効であるという倫理規範が強く作用します。さらに韓国内では、慰安婦問題が保革対立の政争の具として利用されやすい政治土壌も存在します。
【プロの結論】外交的リアリズムと感情論を峻別する判断基準
メディアリテラシーの観点からこの問題を捉える際、読者が意識すべき明確な判断基準は「法秩序・公的記録」と「政治的主張・道義的言説」の峻別です。
感情的なバッシングや一方的なプロパガンダに流されず、以下の客観的な視点を持つことが不可欠です:
- 客観的評価ができる人の基準:条約や外交合意の文言、一次史料(公文書・軍資料・中立的尋問調書)を精読し、当時の時代背景と現在の国際法規範を切り離して多角的に分析できる。
- 誤認に陥りやすい人の特徴:一部の扇情的なネット言説や切り取り動画、あるいは一方の当事者団体の主張のみを無批判に受け入れ、外交合意の経緯や歴史的事実の検証を軽視してしまう。
歴史の痛みを記憶し女性の人権を尊重することと、国家間の法的枠組みや事実関係を正確に守ることは、本来対立する概念ではありません。両者を感情的に混同することが、対立の長期化を招く最大の要因となっています。