「唐沢寿明の歴代ドラマで、生涯の1本を挙げるなら何か」。この問いに対し、批評家、テレビ業界関係者、そして一般視聴者の意見が圧倒的一致を見せるのが、2003年から2004年にかけてフジテレビ開局45周年記念ドラマとして2クール連続放送された『白い巨塔』です。
昭和の名優・田宮二郎が演じた前作があまりに神格化されていたため、制作発表当初は「唐沢にあの重厚な財前五郎が務まるのか」という懐疑的な声も少なくありませんでした。しかし蓋を開けてみれば、医学界の頂点を目指して冷徹に突き進む野心と、その裏に潜む剥き出しの人間的脆さを見事に表現。最終回の視聴率は関東で32.1%、関西では39.9%という驚異的な数値を叩き出しました(ビデオリサーチ調べ)。
唐沢が演じた財前五郎は、単なる冷血漢ではありません。当時の雑誌インタビューやメイキング特番で本人が語っていた「財前は悪人ではなく、純粋に自分の腕を信じ、権力を握らなければ救えない命があると信じ切っていた男」という言葉通り、傲慢さの奥にある哀哀たる孤独が、現代の視聴者の胸をも激しく打ちます。総回診で見せる威風堂々たる歩みから、自らが病魔に倒れて死を迎える病床での鬼気迫る表情に至るまで、唐沢寿明という俳優の演技メソッドが頂点を極めた最高傑作と言い切れます。