多くの人が「カエルの歌」を歌う際に衝突するのが、サビとも言える後半の鳴き声パートです。「かえるの歌が きこえてくるよ」に続く部分を、「クワクワ クワクワ ゲロゲロゲロゲロ クワクワクワ」と記憶している層もいれば、「ゲロゲロ ゲロゲロ クワクワクワ」と短く歌う層、あるいは「ケロケロ」を多用する層に分かれます。
この混乱の原因を調査すると、小学校の音楽教科書を発行する出版社ごとの表記差異と、教育現場での指導要領の変遷に行き着きます。昭和20年代から30年代にかけて学校教育に導入された際、合唱指導の第一人者であった岡本敏明(おかもと・としあき)氏が手掛けた訳詞では、ドイツ語の原詩に近い「クワクワクワ」が基調とされていました。
しかし、日本語のオノマトペとして日本人に最も馴染み深いカエルの鳴き声は「ゲロゲロ」や「ケロケロ」です。幼児教育の現場において「クワクワ」ではアヒルと混同しやすいという保育士らの意見や、リズムに乗せてリズミカルに発声させるための改良が各社で進められました。その結果、教育芸術社や教育出版など大手教科書会社の間で採用フレーズに微細な違いが生じ、受けてきた教育年代や採択教科書によって記憶の刷り込みが枝分かれすることになったのです。