昭和30年代から50年代にかけての日本の街並みを記録した写真資料を開くと、そこには溢れんばかりの人波とエネルギーが記録されています。アーケードの下には、八百屋、魚屋、肉屋、乾物屋といった食料品店が軒を連ね、店先では威勢のいい掛け声と主婦たちによる値切りの会話が絶え間なく交わされていました。冷蔵庫の普及が道半ばだった時代、日々の食材を夕方に買い出しに行く行動そのものが、住民同士の自然な交流の場として機能していたのです。
とりわけ子どもたちにとっての聖地だったのが「昔の駄菓子屋」です。10円や20円の硬貨を握りしめ、店のおばあちゃんと世間話をしながらくじ付きのお菓子やおもちゃを選ぶ時間は、社会のルールやお金の価値を学ぶ最初の体験教室でもありました。個人商店同士の横のつながりも強固で、商店街全体がまるで一つの大きな家族のように子どもたちを見守り、夕暮れの街にはコロッケを揚げる油の香りと人々の笑い声が満ちていました。