西京焼きの仕上がりを左右するもう一つの決定的な工程が、漬け込み前のさわらの臭み取りと下処理です。さわらは白身魚のような上品な見た目をしていますが、学術上はサバ科に属する赤身魚に近い性質を持ち、鮮度低下に伴い特有の青魚臭(トリメチルアミンなど)が発生しやすい魚種です。
下処理を行わずに直接味噌床へ漬けると、魚から出た生臭いドリップが味噌全体に回り、仕上がりの風味が著しく損なわれます。
プロが徹底している下処理のステップは以下の通りです。
- 振り塩(塩当て):切り身の両面に魚の重量の約1%の塩をまんべんなく振り、バットに斜めに置いて室温で20〜30分置く。浸透圧の働きにより、臭み成分を含んだドリップが体外へ排出されます。
- 酒洗い(または拭き取り):表面に浮き出たドリップを純米酒でさっと洗い流すか、キッチンペーパーで押さえるようにして完全に拭き取ります。水洗いは身の旨味を流出させるため厳禁です。
- 骨と筋の確認:身割れしやすいさわらの繊維を壊さないよう、優しく扱いながら小骨を処理します。
この脱水処理を行うことで、身が引き締まり、後から漬け込む西京味噌の芳醇な風味が奥までスムーズに浸透する土台が完成します。