東堂葵を取り巻く議論の中で、読者やネットコミュニティを長年混乱させていたのが「存在しない記憶」に関する誤解です。
京都姉妹校交流会での虎杖との対戦時、虎杖の好みの女性のタイプを聞いた東堂の脳内に「虎杖と東堂が同じ中学校で青春を過ごした」という架空の過去が突如として駆け巡りました。さらに渋谷事変の脹相戦でも同様に「存在しない記憶」が描写されたため、連載当時は「虎杖悠仁自身の隠された術式(記憶改変能力)ではないか」という仮説がSNSや考察サイトで定説のように語られていました。
しかし、原作者の公式コメントや物語の結末を通じて明らかになった真相は、「虎杖の能力ではなく、東堂葵の桁外れな妄想力の産物」に過ぎなかったという事実です。脹相の現象は受肉した兄弟としての生物学的感知(血の繋がりによる共鳴)という全く別の理由によるものであり、東堂のそれは純粋に彼の「脳内IQ53万」と崇拝するアイドル「高田ちゃん」への愛が生み出した、極めて特異な主観的演出でした。このミスリードの鮮やかな回収は、ファンの間で改めて東堂というキャラクターの怪演ぶりを印象づける結果となりました。