街角の不二家洋菓子店で首を揺らすペコちゃん人形。そのトレードマークである「舌出しポーズ」のルーツについて、不二家の公式見解はきわめて明快です。あの表情は、「ほっぺたに付いたお菓子のクリームをペロリと舐めている、無邪気でおいしそうな表情」を表現したものです。
ペコちゃんが世に送り出されたのは、第二次世界大戦の爪痕が色濃く残る1950年(昭和25年)のことでした。不二家の創業者・藤井林右衛門の次男である藤井誠司(後の不二家社長)らが、銀座六丁目店の開店に合わせて「戦後の荒廃した東京で、子どもたちに夢と笑顔を取り戻したい」と考案したのが始まりです。
当時、日劇ダンシングチームの公演や海外のパペット人形からインスピレーションを受け、張り子で作られた人形が店頭に設置されました。頬を紅潮させ、舌を少しのぞかせてお菓子をねだるような表情は、甘いものが極めて貴重だった配給制の時代に、子どもたちのみならず大人たちの心をも強く惹きつけました。つまり、あのポーズは「おいしいお菓子を食べたときの自然な幸福感」を具現化したシンボルだったのです。