昭和から平成にかけての日本の芸能界では、アーティストが自らの独立事務所を立ち上げ、妻や家族が代表・経理を担当する「ファミリービジネス型マネジメント」が数多く見られました。しかし、この形態は家族関係の歪みや金銭トラブルによって崩壊するリスクも孕んでいます。
谷村孝子氏のケースから学ぶべき教訓は、「家族としての情愛」と「組織マネジメントの境界線(バウンダリー)」を冷徹なまでに峻別した点にあります。
長男の問題が起きた際にも感情論で庇い立てせず、即座に組織としての処分を下すなど、ガバナンスを機能させ続けました。また、夫である谷村新司さんのカリスマ性を最大限に生かすため、自らは徹底して黒子に徹し、利権争いの火種を排除しました。これこそが、大スターの遺産と名誉を長きにわたって守り続けるための最も強固な防衛策であったといえます。