この園のシンボルといえば、間違いなくボルネオゾウ「ふくちゃん」だ。日本国内でボルネオゾウを飼育している施設はここだけであり、その希少性は極めて高い。マレーシアのボルネオ島からやってきて以来、愛らしい仕草と温厚な性格で多くの来園者を魅了してきた。ゆったりとした足取りで運動場を歩き回り、鼻を器用に使ってエサを食べる姿は、時間を忘れて見入ってしまうほどの存在感がある。
現場を支える福山市立動物園飼育員の視線は温かく、同時にプロフェッショナルだ。ふくちゃんの体調管理や精神的な安定を図るため、日々のトレーニングや給餌方法には細やかな工夫が凝らされている。熱帯雨林の減少により絶滅の危機に瀕する野生個体群に思いを馳せるとき、ここで行われている生息地域外保全の重要性が浮き彫りになる。単なるアイドル展示ではなく、生き物の命と種の存続を考えるための生きた教材として、ふくちゃんは今も多くの人々にメッセージを発信し続けている。