一般的にメガバンクを舞台にしたビジネス社会において、銀行から子会社への出向は「片道切符の左遷」と受け取られるケースが少なくありません。キャリアの終盤を迎えたベテラン行員が関連会社へ転籍を前提に出向する場合、それは事実上のエリートコースからの脱落を意味します。
しかし、半沢直樹のケースは一般的な左遷とは決定的に異なっていました。半沢の年齢はバブル入行組の40代前半であり、本店営業第二部次長から東京セントラル証券の営業企画部長への着任は、役職としては「次長から部長への昇格」にあたります。
若手や中堅のエース行員が子会社の要職に出向し、実績を上げて再び銀行本部の中枢へ呼び戻される「往復切符の戦略的出向」は、実際の金融界でも珍しくありません。資本市場の最前線で子会社の収益力を高めるという特命を帯びた実戦修行であり、将来の役員候補として幅を広げさせるための「実質的な栄転を含んだ試練」であったと解釈するのが極めて自然です。