同じ「赤」と「緑」という組み合わせであっても、混ぜる対象が「物体(顔料・染料)」なのか「光(電磁波)」なのかによって、生成される色は180度異なります。この現象の根底には、物理学における加法混色と減法混色という根本的な原理の違いが存在します。
テレビ画面やスマートフォンの有機EL・液晶ディスプレイは、赤(Red)・緑(Green)・青(Blue)の「光の三原色(RGB)」を発光させて色を表現しています。暗闇に赤いライトと緑のライトを同時に照射して光を重ねると、人間の網膜にあるL錐体(赤を感じる細胞)とM錐体(緑を感じる細胞)が同時に刺激されます。脳はこの2つの刺激を受け取った際、570〜590ナノメートル付近の単一波長である「黄色」の光を見たときと全く同じ反応を示します。つまり、赤と緑の光を加法混色すると鮮やかな黄色として認識されるのです。
一方、画用紙に塗るアクリル絵の具や水彩絵の具、印刷インクなどの物質は、それ自身が発光しているわけではありません。太陽光や部屋の照明光から特定の波長を吸収し、反射した残りの波長だけを目に届けています。赤の絵の具は主に赤の波長を反射し、緑の絵の具は緑の波長を反射しますが、この2つを物理的に混ぜ合わせると、お互いがお互いの反射波長を吸収し合ってしまいます。その結果、目に戻ってくる光の量が減少し、明度と彩度が著しく低下して濁った茶色や黒っぽい色に変化します。