55年体制を単なる「過去の悪しき金権政治」と切り捨てることはできません。一方で、長期政権がもたらした制度疲労も甚大でした。この体制が日本社会に与えたメリット・デメリットを複眼的に整理します。
最大のメリット:高度経済成長を支えた「政治的安定」と中間層の形成
第一の功績は、政権が極めて安定していた点です。欧米諸国が度重なる政権交代で政策の継続性に苦しむ中、日本は自民党政権のもとで池田勇人の「所得倍増計画」をはじめとする産業政策を一貫して推進できました。官僚機構が描いた経済プランを政治が後押しし、社会資本整備や輸出主導型の産業育成が滞りなく進んだことは、日本が世界第2位の経済大国へ駆け上がる最大の推進力となりました。
また、自民党は農村部や地方への公共事業・補助金配分を通じて富を再分配し、社会党は労働組合を通じて都市部労働者の賃金引き上げを後押ししました。結果として、国民の9割が自らを中流階級と認識する「一億総中流社会」を形成する土台が築かれました。
深刻なデメリット:派閥政治の暴走、密室談合、そして構造的汚職
一方で、デメリットは政治の腐敗と形骸化に直結しました。中選挙区制では、1つの選挙区に自民党公認候補が複数名出馬するため、候補者同士の最大の敵は野党ではなく「同じ自民党の別派閥のライバル」でした。政策の優劣ではなく、冠婚葬祭の面倒見や地元への利権誘導、そして現金をばらまく買収合戦が常態化しました。
派閥のボスは子飼いの議員を増やすために莫大な政治資金を必要とし、これがロッキード事件(1976年)やリクルート事件(1988年)といった構造的な汚職事件を次々と引き起こす元凶となりました。また、「国対政治」によって国会審議が形骸化し、国民の見えない密室で政策が取引される不透明さが定着してしまったのです。